オキナワマルバネクワガタとやんばるの森を想う

今年もそろそろですね、オキナワマルバネクワガタ。

やんばるの森のみに住むクワガタで、成虫は秋(9~10月頃)に現れます。
2016年、環境省は「種の保存法」により国内希少野生動植物種に指定し、採集や譲渡等を禁止しました。

生息環境の悪化や採集圧により減少が著しく、またやんばるは国立公園化、世界自然遺産登録を目指す中でやむを得ないことでしょう。

国内希少野生動植物種の指定前、最後のシーズンとなった2015年の秋は相当数の採集者が来ていたようです。
指定後の昨シーズン(2016年)は、マルバネの季節に合わせるかのように国頭村では村営林道の夜間通行規制を9月より開始しました。
また、採集者を取り締まるため、環境省や地元警察、森林組合、住民らによるパトロールも強化されました。

まあ、マルバネに限ったことではありませんが、やれやれと言いますか、相も変わらずですね。

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オキナワマルバネクワガタはなぜいなくなった?

オキナワマルバネクワガタとやんばるの森を想う

そもそもオキナワマルバネクワガタは本当に減ってしまったのか?
減ったとしたらいつどこでどのくらい減ったのか、これまでのモニタリングデータは?
その原因を示す科学的データは?
と言いたくもなりますが、減ったという話しか聞かないので減っていることは間違いないでしょう。

問題は、なぜ減ったのか?ということですね。
やはり採集圧?
度を超えた悪質な乱獲、商業目的の大量採集、繁殖場となる樹洞の盗掘など、このような採集者を擁護するつもりはありません。
しかし、マルバネ減少の要因を採集圧として、ただ採集禁止、採集者の取締りという現状の対策は、まるで採集者のみを悪者に吊るし上げ、根本的な要因から目を背けさせている気がしてならないのは私だけでしょうか?

 

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やんばるの森と林業

オキナワマルバネクワガタとやんばるの森を想う

やんばるの森に来ると、まず驚くのが林道の多さです。
やんばる3村(国頭、大宜味、東)の林道密度は7.9m/haで、国頭村においては9.6m/haと全国平均の5.1m/haをはるかに上回っています。
さらに林道舗装率は、全国平均の44.7%に対し沖縄県は93.2%。

2015年3月、国頭村における林道事業に対し、県の公金支出差し止めを求めた裁判の判決(那覇地裁)があり、休止中の林道事業の再開は社会通念上是認できない、としました。
現在も林道開設は休止のままで、世界遺産登録を目指す中で今後も事業の再開はないでしょう。

 琉球朝日放送「やんばる林道訴訟 判決」(外部リンク)

やんばるの森の中を網の目のように縦横無尽に走る、異常ともいえる林道事業の実態が裁判で明らかになったわけですが、この訴えがなければ未だに新しい林道がつくられていたかと思うとぞっとします。

しかしその一方で、林業という名のもと、国頭村の村有林では毎年10ha程の規模で皆伐(ずべての樹木、草木を伐る)が行われています。
木材資源の需要が低迷し、将来的な見込みもないまま、補助金によって成り立たせている事業です。
もちろん、土砂流出防止や水源涵養、生態系の保全といった多面的機能を有する一次産業(本土の中山間地域の農業や森林育成など)のように公益性の高いものであれば、補助金による支援が不可欠と言えます。
しかし、やんばるの現状の林業はと言えば、需要が見込まれないまま皆伐して有用樹の人工林に転換するというもので、公益性どころか皆伐による赤土流出や生態系の破壊といった環境への影響が非常に大きいものです。
補助金によって続ける事業でないことは明白でしょう。

最近では、環境への配慮を謳い、下のような看板を現地で見ることがあります。

オキナワマルバネクワガタとやんばるの森を想う

そもそも、この試験を実施する背景や目的が全くわかりません。
帯状択伐と皆伐の違いは何ですか?
配慮事項として「沢沿いの樹木を残置」とありますが、大型機械では沢沿いの急傾斜地での作業はできませんし、地図を見るとそもそも沢は試験区域外になっていますし、一体何を言いたいのか理解に苦しみます。

 

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採集者の取締りだけでは何も変わらない、マルバネ減少の本当の要因は?

オキナワマルバネクワガタの減少の根幹は、このような林業と林道事業にあると考えられます。

森林の皆伐による生息地の破壊・分断にはじまり、林業のための異常な数の林道開設がさらに環境の悪化、側溝での乾固死、ロードキル等を招いただけでなく、悪質な採集者の森の奥への侵入を許してしまったのではないでしょうか。

もちろんこのような要因は、私の推測であり、異論・反論あるかと思います。
採集禁止と採集者の取締りは、現状では必要と思いますが、同時にモニタリングによる生息状況の把握、減少の原因究明と対策がなければ単なるパフォーマンスと言わざるを得ません。
皆伐によって人知れず消えていくものより、採集者による捕獲のせいにした方が対外的にも目に見えてわかりやすい、というだけです。

昨年、採集者取締りのパトロールの様子が地元新聞に写真とともに掲載されていました。
森林組合が参加していることに驚きましたが、地元住民と思われる女性参加者の足元がサンダルだったことにはもっと驚きました。
一体何をしているのでしょうか?

 

まとめ

やんばるでは、毎年新たな森が伐り拓かれ、皆伐による林業が税金によって今も続けられています。
昨年9月にやんばる国立公園が誕生しましたが、そのエリアは林業を優先するかのような限定的なもの。
全体として見れば、やんばるの森の質は低下の一途を辿っています。

もちろん戦後の荒廃した地から森の育成に尽力し、現在も林業で生計を立てている方がいらっしゃいます。
環境省や沖縄県は、原生的な森に生息・生育する固有種を価値とする世界自然遺産登録を目指すのであれば、現状の林業ではなく本来あるべき亜熱帯の自然を保全・活用した地域づくりへ転換するべきでしょう。
林道も、管理用の必要最小限なものを残して、それ以外は取り壊すぐらいの改革をするべきです。

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