サトウキビの花の季節に思う沖縄の農業

サトウキビの花穂

サトウキビの花穂

沖縄の12月。
天気の良い日は気温が25度を超える日もありますが、季節は冬です。
サトウキビ畑では、すらっと長く伸びた銀色の花穂があちこちで目立つようになりました。
北風に揺れるサトウキビ畑の花穂を見ると、気温が高くても冬を実感しますね。
沖縄の冬景色と言ったところでしょうか?

さて、サトウキビ畑は沖縄の風景の一つでもあり、沖縄県の基幹作物になっています。
実際、農家の7割以上が栽培し、耕地面積の約5割、農業生産額の約2割を占めているそうです。

なぜこれほど沖縄でサトウキビが栽培されているのか、もちろん南国沖縄の気候風土が栽培に適していることはすぐに想像できますが、本土から来た者にとって疑問に思うところでもあり、その理由を調べてみました。

沖縄のサトウキビ栽培の歴史

始まり

琉球王朝時代の1623年、中国から製糖技術が導入されたことから栽培が広がり、その後、昭和初期には栽培面積が約15,000haまで増加していきました。
しかし、戦後は、食糧増産のためコメなどの生産が優先され、サトウキビ栽培は低迷しました。

サトウキビ栽培の拡大

転機は昭和37年(1962年)のキューバ危機です。
当時世界最大の砂糖輸出国であったキューバが減産したことで砂糖の国際価格が急騰し、栽培農家が急増しました。
ピークの昭和40年(1965年)頃は、栽培面積が30,000haを超えました。

その後の低迷と現在

高騰していた砂糖価格の急落後、ブームは落ち着き、農家数、栽培面積とも減少。
本土復帰後は、現在まで横這いまたは緩やかな減少傾向にあり、平成27年(2015年)の栽培面積は約18,000haとなっています。

コメからサトウキビへ 沖縄農業の転換

冬のサトウキビ畑

冬のサトウキビ畑

沖縄のサトウキビ栽培の歴史を見ると、昭和37年のキューバ危機が大転換期であったことがわかります。
それまでコメは、昭和30年代、10,000haを超える面積で栽培されていましたが、キューバ危機とその後の干ばつ等の影響もあって、サトウキビへの転換が急速に進んでいったのです。

現在、沖縄のコメは平成26年(2014年)で作付面積860haと、ピーク時の1/10以下となっています。
また、沖縄県全体では、平成25年(2013年)で作付面積は2.7%、農業産出額は0.7%を占めるに過ぎず、県内自給率も約3%と大変低くなっています。
栽培されている地域も限定的で、本島では、北部の名護市、金武町、恩納村、北部離島の伊平屋村、伊是名村、この他では八重山諸島の石垣市、竹富町、与那国町等の離島です。

このように、沖縄の農業は、昭和30年代に、それまでのコメからサトウキビに転換され、以降、基幹作物としてサトウキビが栽培されてきました。

沖縄農業・コメの未来

現在、農家の7割以上の方が栽培する基幹作物・サトウキビ。
国や県も増産の支援を様々な形で積極的に行っています。

一方、沖縄のコメは、台風や干ばつ等の影響で、単位面積当たりの収量が全国平均の5割弱と低水準にあることからも、作付面積の低い現状が続いているのでしょう。

しかし、コメの県内自給率が約3%というのはあまりにも低すぎるのではないでしょうか?
台風や干ばつ等、厳しい自然条件下で生産性が悪いとはいえ、戦後、10,000haを超える面積で栽培されていた歴史があり、水田耕作ができないわけではありません。
本来、地理的に水田に適している土地までほとんどサトウキビ畑になっているのが現状です。

また、環境保全の観点からも、抜本的な赤土流出の対策が困難なサトウキビに対して、水田はそのものが土壌浸食を防止する構造であり、さらに多様な生物の生育・生息環境としても機能します。

沖縄県の赤土等流出防止パンフレットによると、H23年度の赤土等流出量のうち農地の占める割合は86%とされています。

コメは、単に自給率の向上だけでなく、海も陸も含めた環境保全に貢献する農業であり、生産性のみで評価されるものではないはずです。
国や県は、コメ農家に対して直接支払制度のような支援を行い、増産と作付面積の拡大を図るべきではないでしょうか?

まとめ

  • 昭和37年のキューバ危機を転機に、コメからサトウキビに転換
  • 現在、サトウキビは沖縄の基幹作物(県内農家の7割以上、耕地面積の約5割を占める)
  • 一方、コメの作付面積は全体の2.7%、県内自給率は約3%
  • コメ自給率の向上と環境保全の観点から、コメ増産と作付面積の拡大を図るべきではないか

終わりに、冬に本土から観光に来られる方へ。
ぜひ、サトウキビ畑で、風に揺れる銀色の花穂を探してみてくださいね。
(ススキと見間違える方もいますが、ススキの花穂は茶色でもっと短いですよ)

ススキとサトウキビ

左手前がススキ、奥がサトウキビ

参考資料:
・沖縄の農産物の概要,平成27年4月 沖縄総合事務局農林水産部生産振興課
・平成27年度 沖縄農林水産業の情勢報告 第2章 農業の振興,平成28年8月 沖縄総合事務局農林水産部

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