初心者のための一眼デジカメ【その4:撮影編】
4回目の今回はいよいよ「撮影編」です。
1回目で絞りやシャッタースピードの役割や効果、2回目でカメラ選びについて解説しました。
3回目では、レンズの焦点距離と画角の関係、開放F値について解説しました。
今回は、実際に絞りやシャッタースピードを操作するポイントや、レンズ焦点距離の特性、活かし方を解説します。
一眼デジカメと交換レンズを使いこなし、スマホでは撮れなかった写真表現を目指しましょう。
レンズ焦点距離(画角)を活かす
レンズの焦点距離は画角を表す数字でしたね。
50mmを標準レンズとし、それより短いのが広角、長いのが望遠と分類されます。
画角は、写真撮影において構図を決定する大変重要な要素。
そして、画角の特性を理解し、それをいかに活かせるかが写真表現のポイントになります。
広角レンズ
広角レンズは、広い画角で被写体を写し込むもの。
広い分、そのままでは被写体は小さく写りますが、撮影ポジションを変えて被写体に近づくことで、遠近感を強調できるのが特徴です。
遠近感とは、近くのものをより近くに、遠くにあるものをより遠くにあるように感じることです。
そして、遠近感は被写体に近づくほど強調することができます。
広角レンズは、広い画角でいろいろなものを写し込める分、被写体が小さくなり、ただ広いだけで主題が不明確になりがちです。
撮影の際は、被写体に「もう一歩」近づくことを心がけ、前景と背景を意識して遠近感を強調させることがポイントです。
また、もともと被写界深度が深いので、絞りを絞って全体にピントが合った表現(パンフォーカスと言います)が可能です。
広角レンズ特有の遠近感で、広がりのあるダイナミックな構図を狙いましょう。
望遠レンズ
望遠レンズは、狭い画角で被写体を大きく写します。
近づけない被写体を遠くから狙ったり、絞りを開けて背景をぼかし被写体を浮き立たせることができます。
広角レンズは写し込むものをプラスする足し算に対し、望遠レンズは切り取ることで主題を強調する引き算と言えます。
つまり、どこをどう切り取るかがポイントです。
また、広角レンズの遠近感に対して、望遠レンズには圧縮効果を生む特徴があります。
圧縮効果とは、遠くから望遠レンズで撮影した際に、近い所と遠い所の距離差が縮められ、前後方向に圧縮したように写ることです。
単に大きく写すのではなく、「切り取る」ことを意識し、条件によっては望遠レンズ特有の圧縮効果も狙ってみましょう。
絞りとシャッタースピード
写真表現の上で、レンズの画角と同じように重要なのが絞りとシャッタースピードです。
絞り ーボケを操るー
ピントが合っているように見える範囲のことを「被写界深度」と言います。
そして、被写界深度を決めるのが絞りです。
例えば、絞りを開けると被写界深度が浅く、つまり前景や背景がぼけやすくなります。
反対に絞れば被写界深度が深くなり、ぼけにくくなります。
ここで重要なポイントが「ぼかす」です。
「ぼかす」というのは、人間の視覚にはない写真表現の特徴の一つ。
つまり、ぼかすのかぼかさないのか、ぼかすならどこをどれくらいぼかすのか、常に意識することが大切です。
より多くぼかす(被写界深度が浅い)には、単に絞りを開けるだけでなく、以下の条件も関係します。
- 焦点距離が長いレンズほどボケやすい。
- レンズからの距離が近いものほどボケやすい。
- ピント位置からから離れているものほどボケやすい。
例えば、200mmの望遠マクロ(接写レンズ)で小さな花や昆虫などに近づいて狙えば、被写界深度が非常に浅くボケも大きくなります。
また、レンズの開放F値(F値:絞りの値)も重要です。
焦点距離が同じレンズでも、開放F値がF5.6とF2.8のレンズでは、当然F2.8の方がぼかせる分、表現の幅が広がります。
ただし、開放F値が小さいレンズというのは、大型で値段も高くなります。
ボケと点光源
水面の反射や電球などをぼかすと、点光源となって写ります。
この点光源は、より多くぼかすほど大きくなります。
(円形絞りを採用しているレンズは、円形に近く美しくなる)
点光源もボケの表現の一つとして、意識的に狙ってみてください。
【ボケは英語でbokeh?】
ボケは写真表現の重要な要素ですが、レンズによってボケ描写は異なり、ボケ味と呼ばれます。
これまで日本のカメラメーカーは、より美しくなめらかなボケ味にこだわったレンズをつくってきました。
これは日本独特のもので、英語でもそのまま「bokeh」となっています。美しいボケ味には、日本人の繊細な美的センスを感じます。
その最たるが究極のボケ味を追求したミノルタのSTFレンズではないでしょうか?
ボケを活かした作例
「クリスマスのカップル」(東京都2004年12月)
遠くのレインボーブリッジとツリーの明かりをぼかす
80-200mmズーム(120-300mm相当) 1/13 F3.5 ISO800
シャッタースピード ー時間を操るー
シャッタースピードは普段の撮影ではあまり気にしないかもしれませんが、例えば暗い室内ではシャッタースピードが遅くなるため動き回る子供を撮ればブレて写ります。
あるいは動かないものでも手ブレでブレてしまうこともありますね。
このようなときは、なるべく絞りを開けたり、ISO感度を上げて明るさを稼ぎ、少しでもシャッタースピードを速くしてあげます。
また、シャッタースピードの操作は、目では追えない速い動きの瞬間を止めたり、反対にスローな動きを流したり、やはり人間の視覚にはない表現が可能です。
写真は時間を記録するものですから、シャッタースピードは写真表現に欠くことのできない要素と言えます。
「時間」を意識して、写真だからこそ狙える表現を狙ってみてください。
シャッタースピードを活かした作例
撮影モードの選択
実際に絞りやシャッタースピードの操作はどのように行えばよいのでしょうか?
カメラの撮影モードには、P(プログラムオート)、A(絞り優先オート)、S(シャッタースピード優先オート)、M(マニュアル)があります。
Pは、カメラ側で絞りとシャッタースピードの組み合わせが自動的に決まるモードです。
Aは、絞りを撮影者が選び、シャッタースピードが自動的に決まります。
Sは、シャッタースピードを撮影者が選び、絞りが自動的に決まります。
Mは、絞りとシャッタースピードを撮影者がそれぞれ選ぶことができます。
そして、撮影モードではありませんが、ISO感度はオートあるいは撮影者が選ぶことができます。
おすすめの撮影モードは?
普段は、ISO感度はオートにして、絞り優先のAモードでの撮影がオススメです。
常に絞り(つまり被写界深度)を意識し、ぼかすのかぼかさないのか、被写界深度を考えて撮るようにしましょう。
被写界深度を考えずにとりあえず撮っておきたいときはPモードで良いですし、いっそスマホの方が便利ですね。
(スマホは被写界深度が深いのでパンフォーカスな写真になります)
もちろん、スポーツなど動きものを狙う撮影では、シャッタースピード優先のSモードやマニュアルのMモードがいいでしょう。
MモードでもISO感度をオートにしておけば、被写体の明るさが変化する条件でも楽に撮影できますね。
露出の調整
露出は、基本的にカメラまかせでOKです。
自動でカメラが判断して適正な明るさにしてくれます。
ただし、機械ですので万能ではなく、実際よりも明るくなったり暗くなったりすることがあります。
また、撮影者が意図的に明るくしたり、暗くしたいときもあるでしょう。
このようなときは、露出補正を使って調整してあげます。
人物や夜景などは、実際よりも少しプラスに補正してあげるとよいと思います。
(カメラの顔認識機能で顔認識すると、自動的にプラス補正されるものもあります)
ある程度の調整であればPCでもできますので、撮影時はあまり気にせず、撮影後にPCでお好みで調整するのもOKです。
まとめ
広角レンズは被写体に近づいて遠近感を強調したり、望遠レンズは「切り取る」意識でフレーミングして圧縮効果を狙ったり、焦点距離の特徴を活かした表現を狙いましょう。
また、絞りとシャッタースピードを操ることで、人間の視覚にはない写真表現が可能です。
はじめは頭の中が整理できず大変かもしれませんが、慣れると反射的にできるようになります。
ただシャッターを押すだけでなく、何を狙いたいか主題をはっきりさせ、レンズは?絞りは?と、どう表現すれば良いか考えることが大切です。
あとはたくさん写真を撮って経験するのみ!
次回は最終回。
「もう一歩上達するために編」です。
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