初心者のための一眼デジカメ【その1:スマホじゃダメなの?編】
私が初めて一眼レフカメラを持ったのは高校生の時。
いとこに譲ってもらったキヤノンのMFカメラでした。
20年以上も前のことで、当時はもちろんフィルムの時代。
その後、コンパクトカメラも一眼レフカメラもデジタル化され、その手軽さからカメラが多くの人に普及しました。
そして、今やカメラを持たずともスマホで十分満足できる写真が撮れる上、撮った写真を持ち歩ける時代。
ポケットにカメラとアルバムを携帯しつつネットを通じてシェアできる、というこれほど写真が身近になった時代があったでしょうか?
そう、もうスマホがあればカメラは不要、これからさらにスマホのカメラ機能も進化していきますしね。
多くの方はそう感じていると思いますし、それでいいと思います。
日常の何気ない瞬間を思い出として記録しておきたい、わざわざカメラを用意しなくても手元のスマホで気軽にそれができる、なんて素晴らしいことでしょうか。
でも、一方でカメラがなくならないのもまた事実。
一時期のデジカメブームの頃のようにカメラが売れなくなったのは当然ですが、今も新製品が登場し売れています。
やはりカメラにはその存在意義があり、手軽さとは別の趣味としての魅力だったり文化や芸術としての歴史もあります。
では、具体的にカメラはスマホと何が違うのでしょうか?
同じ写真なのに、なぜスマホではなく重くて大きな一眼デジカメを使うのでしょうか?
スマホによって写真がこれほど身近になったからこそ写真に興味がわき、スマホでは撮れない写真を撮ってみたい、一眼デジカメを使ってみたいという方も多いと思います。
そこで、「初心者のための一眼デジカメ」と題して5回にわたりお届けします。
今回は、スマホとの違いを中心に、カメラの基礎知識として【その1:スマホじゃダメなの?編】です。
文字ばかりで恐縮ですが、カメラに必要な知識として最後までお読みいただければと思います。
写真とは? カメラとは?
そもそも写真って何でしょうか?
少し抽象的に言うと「時間を記録したもの」ですが、現象としては「光を写したもの」です。
そして、光を写すための道具がカメラとなります。
レンズを通った光をカメラの撮像素子(フィルムの役割、イメージセンサー)に露光(デジタルでは電気信号に変換)させることで、初めて写真(画像)となるわけです。
光を写すための3つの仕組み
それでは、カメラはどのような仕組みで露光させるのでしょうか?
光と言っても、晴れた日の明るい屋外の光、暗い室内の光、星空など、その明るさは様々です。
カメラは、異なる明るさを適正になるよう機械的に調整する役割をもっています。
人の目は私たちが意識しないところで明るさを調整しているのでピンとこないかもしれませんが、身の周りの明るさは「光量」という細かい数値で表され、適正な明るさにするには「光量」を正確に制御する必要があるのです。
そして、「光量」を制御するカメラの仕組みが次の3つ。
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO感度
絞りは、レンズから入る光量を調整するもので、明るいところでは絞りを絞って光量を抑え、暗いところでは絞りを開けて光量を増やします。
ちょうど人の目の虹彩が伸び縮みして瞳孔が大きくなったり小さくなったりするのと同じです。
F値という数字で表し、大きくなるほど絞った状態を意味します。
カメラでは、明るさの単位として、「~段」または「~EV」が使われます。
表の例のように、絞りのF値は、1段絞る(=1段暗くなる、-1EV)と約×1.4倍になります。
F値 2.0 2.8 4.0 5.6 8.0 11 16 22
シャッタースピード(SS)は、レンズから入ってきた光が撮像素子に露光する時間を調整します。
明るいところではSSを速くして光量を抑え、暗いところではSSを長くして光量を増やします。
秒単位で表し、例えば1/250(単に250とも表示される)なら、露光時間が1/250秒(厳密には1/256秒)という意味です。
シャッタースピードの値は、1段速くすると(=1段暗くなる、-1EV)と×2倍になります。
表の例のように、例えば実際の露出時間が1/64秒のとき、カメラのシャッタースピードは便宜的に1/60(または60)と表示されます。
SS 1/4
(4)1/8
(8)1/15
(15)1/30
(30)1/60
(60)1/125
(125)1/250
(250)露出時間 1/4 1/8 1/16 1/32 1/64 1/128 1/256
ISO感度(ISOは国際規格のこと)は、撮像素子自体の光量の受けやすさです。
明るいところでは感度を下げて光量を受けにくくし、暗いところでは感度を上げて光量を受けやすくします。
日中の屋外であれば、大体感度200~800程度で撮影されます。
表の例のように、感度の値は、1段上げると(=1段明るくなる、+1EV)と×2倍になります。
ISO感度 50 100 200 400 800 1600 3200 6400
明るさは、これら3つから得られる光量の合計で決まり、カメラは合計量が適正になるようこの3つをそれぞれ制御します。
写真を表現する -3つの仕組みの理由とは?-
では、光量を調整するのになぜ仕組みが3つもあるのでしょうか?
例えば、感度だけ調整すればいいのでは?と思いませんか?
実はここにカメラの存在意義があり、写真を表現するための技術があります。
絞りとSSは、単に光量を調整するためだけのものではないということです。
①絞りの役割と効果
絞りには、光量だけでなくピントが合って見える範囲(「被写界深度」と言います)を変える役割があります。
例えば、絞りを開けると、光量が増えると同時にピントが合って見える範囲が狭くなります(被写界深度が浅くなる)。
つまり、ピントを合わせた前後がボケやすくなり、被写体を浮き立たせる効果があります。
反対に、絞りを絞ると、被写界深度が深くなり、シャープに写る範囲が前後に広がります。
絞った分、光量が低下しますので、感度が同じならSSがその分遅くなり、手ブレや被写体ブレが起きやすくなります。
②シャッタースピード(SS)の役割と効果
SSによって、被写体の動きをどのように写すか決めることができます。
例えば、SSを速くすると、光量は低下しますが、高速で動く被写体の一瞬を切り取ることができます。
ただ、SSを速くするには、光量低下分、絞りを開けるか、感度を上げる必要があります。
反対に、長くすることで、わざと被写体をぶらして写真に動きを与えたり、夜間に動く光を光跡として写すことが可能です。
③感度の役割と効果
感度は、絞りとSSの状況に応じて、適正な光量になるよう調整する役割があります。
例えば、絞りを絞りたいとき、手ブレしないようSSもある程度速くするなら、光量の低下分、感度を上げてあげるのです。
感度は高くなるほど、ノイズが増えてしまいます。
(機種によりますがISO800くらいから目立ち始めることが多いです)
暗いところで撮るとザラザラした写真になるのはこのためです。
写真表現として、わざと高感度でザラザラした効果を狙う場合もあります。
スマホと一眼デジカメはどう違う?
スマホのカメラも、実はこの3つの仕組みは同じです。
違いの一つは、カメラのように自由にこれらを操作できない、ということ。
たとえ操作を可能にしても、ボタンが限られるのでカメラのように簡単に操作できませんよね。
そしてもう一つがスマホの撮像素子の小ささです。
一眼デジカメに比べると、スマホの撮像素子は非常に小さく、(理由は省きますが)被写界深度がもともと大変深くなっています。
単に記録写真を撮るには都合が良いのですが、背景をぼかしたいとき絞りを開けたところで一眼デジカメのようにはボケてくれないのです。
また、一眼デジカメはレンズ交換ができますので、例えば背景がボケやすくなる望遠レンズを使うことで表現の幅を広げてくれます。
まとめ
このように、カメラの絞りとシャッタースピードを操作することで、背景をぼかして被写体を浮き立たせたり、目に見えない一瞬の動きを写し撮ることができます。
写真は、単に光を写すだけでなく、人間の視覚にはない情景を生み出すことができるのです。
スマホでも、最近は絞りを変えられたり、アプリで背景をぼかす効果を与えたりと、これからも色々な表現が可能になるでしょう。
でも、絞りとSSを操り、レンズ交換しながら意図した表現を可能にしてくれるのは一眼デジカメ。
スマホでも「撮れる」かもしれませんが、一眼デジカメは「撮る」ためのものなのです。
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